働き方改革が騒がれる昨今。求職者の多くは、「ブラック企業」を避けるように就職活動を行うようになった。しかし、実際に働き始めるまでは、その企業がブラック企業なのかどうか判断するのは難しい。そこで参考にしたいのが、弁護士が中心になって立ち上げた一般社団法人ホワイト認証推進機構が発行する『ホワイト認証』である。
ホワイト認証とは、弁護士をはじめとする専門家が企業の労働環境をチェックし、『ホワイト企業』として認証する制度だ。認証された企業はホワイト認証マークなどを掲げることができるようになる。
弁護士の人柄に迫る当メディア、今回は、ホワイト認証推進機構の理事長を務める大川原栄弁護士に迫った。
「相談してよかった」のひと言が一番のやりがい
東京スカイパーク法律事務所 大川原栄先生
福島県会津若松市出身。第二東京弁護士会所属。一般社団法人ホワイト認証推進機構では理事長を務める。ライブドア株主被害集団訴訟や、IHI粉飾決算集団訴訟などに関わり、法人の法律顧問も数多く行う。現在は、豊島区に『東京スカイパーク法律事務所』を構える。2017年には、『めざそう!ホワイト企業 経営者のための労務管理改善マニュアル』を出版。
——弁護士をしていてやりがいを感じる瞬間はいつですか。
やっぱり依頼者に「相談してよかった」と思ってもらえる瞬間ですね。どういう案件であっても、私に弁護してもらってよかったと感じてもらえるのはうれしいし、本当にありがたいことです。
依頼者の人生のひとコマを全力で支える弁護士でありたい
——今までに担当した相談や弁護で印象に残っているものを教えてください。
弁護士になったばかりの頃に担当した傷害事件ですね。弁護したのは、暴行を受けたため若くして認知能力を失ってしまった青年でした。最終的には和解で解決しましたが、その和解金は、20年近くたった今でも支払い続けられています。
事件が解決すれば、弁護士にとっての仕事は完了する。しかし当事者は、今でも事件の影響を確実に受けながら生きています。こうしている今も被害者の事件は続いているんですよ。弁護士にとっては一つの事件でも、依頼者にとっては大きな人生の分岐点なんです。だからこそ弁護士は、全力で依頼者や事件と向き合わなくてはならない。その気持ちは今でも常にもっています。
それに気づくことができたので、この傷害事件は今でも強く印象に残っていますね。
——弁護をするうえで気をつけていることはありますか?
『依頼者のことを信頼する、でも信用はしないこと』ですね。信頼と信用を使い分けているんです。私のもとへ相談に来てくださったので、もちろん信頼はするのですが、やはり依頼者も人間なので、自分に不利な証拠や証言、事実関係、証拠関係を無意識に隠してしまうこともあるんです。
だから依頼者の言葉であったとしても、しっかりと裏付けがとれないかぎりは、用いることはしません。信じて頼ることはあっても、信じて用いることはしない。その点は明確に分けていますね。
後は、依頼者と良いコミュニケーションを取れるように意識しています。弁護士とは、法律という極めて狭い世界で生きる職業なんですよ。当たり前ですが、法律以外に関しては専門外です。だから依頼者の話をちゃんと聞いてしっかり学ぼうと心がけています。
依頼者は、自身の人生や仕事を一番理解している、いわば自分(依頼者自身)の専門家ともいえますから。依頼者の言葉に耳を傾け、彼らの人生を可能な範囲で追体験させてもらう。
そうすることで、しっかりとコミュニケーションを取れるようになり、良い関係性を築けると信じています。
弁護士の経験と知見を生かしてホワイト企業を増やす
——先生は、ホワイト認証推進機構で理事長も務められていますね。
私は弁護士になってから、上場企業を相手にした訴訟を担当したり、中小企業経営者の相談に乗ったりと労働事件に携わる機会が多くありました。だから労働者と経営者それぞれの立場や環境を知り、両者の視点をもつことができたので、それらを合体して何か活動をしたかったんですよ。
——確かにホワイト認証推進機構の活動には、経営者と労働者どちらの立場にも深い理解が必要ですね。では、これから挑戦したいことを教えてください。
経営者たちの意識改革ですね。近年、経営者が抱える多くの悩みは人材確保だと思います。今までの日本は買い手市場だったので、いわゆるブラック企業でも人材を集められました。しかしこれから数十年は、売り手市場が続きます。
つまり企業は選ぶ側から選ばれる側へとまわる。ブラック企業は今後、人材確保が難しくなり、今いる人材の流出も加速していくでしょう。これからの経営者は、どのように人材を確保すればよいのかを本気で考える必要があります。
労働者に選ばれる企業になるためには、従業員を大切にするホワイト経営が必要不可欠です。従業員を大切にすれば、優秀な人材が集まりやすくなり、今いる従業員のモチベーションも上がる。そうなればおのずと生産性も向上していきます。
逆にいえば、法律を守らずにグレーなことをしているうちは、何をしても生産性や業務効率は上がらない。ブラック企業は離職率が高くなるため、新しい人材を確保するための採用費用や、社員の教育費用が余計にかかるんです。だからホワイト経営をした方が、結果的にも企業の成長につながる。そういった意識をより多くの経営者に伝えていきたいですね。
学生時代は棒高跳びに熱中。現在はゴルフに
——学生時代に打ち込んだこと、現在の趣味を教えてください。
陸上部に入っていたので、ポールジャンプ、棒高跳びをしていましたね。始めたきっかけは、友人の先輩が棒高跳びをやっているのを見ておもしろそうだったから。今でこそ、グラスファイバー製のポールを使っていますが、当時は竹でしたからね。おもしろかったですよ。
今の趣味はゴルフです。学生の頃に、校庭の隅っこで手作りのゴルフクラブを使って遊んでいたんですよ。当時から、いつかは本当のゴルフをしてみたいなと思っていました。今は、その夢もかなって休みがあればゴルフ場に足を運んでいます。
依頼者と弁護士は対等な関係「気構える必要はない」
——最後に、弁護士に相談することにハードルが高いと感じている方へメッセージをお願いします。
相談される方は弁護士の依頼主です。だから弁護士が偉いわけでも何でもない。依頼者と弁護士は対等な関係ですから、遠慮したり気構える必要はありません。
一番大切なのは、弁護士と信頼関係をつくれるかどうか。場合によっては、複数の弁護士に相談してみて、自分との相性がよいかを比較しても構わないと思います。そのくらい弁護士は、しっかり選んだ方がいいですね。
そして、困っている内容や疑問は、遠慮せずにストレートに教えていただきたいです。それに対して私はストレートに助言をします。変に遠慮していたら状況は良くなりませんし、弁護士は信頼できるパートナーであるべきですから。
東京スカイパーク法律事務所
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取材・文/菊地 誠 撮影/菊地 誠