東京の青山通りに面したビルにあるEKAI法律事務所。いくつもの会社が入居するシェアオフィスのため、「こんなおしゃれな所で仕事をしているんですか」と驚かれることも多いという。
飯野先生は一見クールで強面だが、話の途中でちらりと見え隠れする優しい表情に、つい話し込んでしまう。どんな仕事をしているのか、詳しくお話を伺った。
EKAI法律事務所 飯野 恵海先生
北海道大学法学部、法科大学院を修了後、2014年弁護士登録(第67期)。おもな取扱分野は、一般企業法務、労働法務、一般民事全般、債務整理(自己破産、個人再生、任意整理)、家事事件(離婚問題、遺言・相続問題)、刑事事件。趣味・特技は旅行、昆虫採集、音楽、読書、スポーツ全般。
「特定非営利活動法人 ストップいじめ!ナビ」でも活動中。
・共著
『スクールロイヤーにできること 学校現場の悩みを法でサポート』
編者:ストップいじめ!ナビ スクールロイヤーチーム
版元:日本評論社
弁護士を目指したきっかけは、高校時代の恩師のひとこと
——飯野先生が弁護士を目指したきっかけを教えてください。
高校3年生のときに、仲の良い政治経済の先生から勧められたんです。ちょうど法科大学院ができたときで、「弁護士に向いていそうだから目指してみたら?」と。先生自身が法科大学院に興味をもっていたようですね。
まったくの偶然ですが、私自身も弁護士という仕事に前からなんとなく興味をもっていたので、目指してみようかと。
それにはまず大学に行かなくてはなりません。でも高校時代はサッカーに打ち込んでいて、そもそも大学に進学するかどうかすら迷っていて、全然勉強をしていませんでした。そこで北海道大学法学部のみを志望校に定め、1年間浪人をして、翌年そこだけを受けて合格しました。
——どのような浪人時代を過ごされたのでしょうか?
浪人時代はとにかく楽しかったですね。いろいろなところから学生が来ていて、仲の良い友達がたくさんできました。当時の友達とは今でもとても仲がいいです。
体育科を受験する生徒もいたので、予備校に体育館があるんです。そこでみんなで卓球したりしていました。当時は18歳で、おしゃれをしたくても服を買うお金がない。ならば「ダメージジーンズを自分たちで作ってしまおう!」と一番安いジーンズを買ってきて、みんなで紙やすりでひたすらゴシゴシ……なんてこともありました。
授業も楽しかったです。久しぶりにまともに勉強してみたら、数学が得意だということに気づいて。パズルを解くような感覚がおもしろくて、楽しんで勉強しました。
——他の道を考えたことはありますか?
司法試験に合格するまでは、別の仕事を考えたこともあります。新司法試験には3回目でようやく合格したんですが、この年は公務員試験も受けました。
実は公安調査局を受験して内定をもらった後に、司法試験の最終合格が出たんです。公安調査局の仕事にも興味があったので「どうしようか」と考えていたら、一本の電話が鳴りまして。どこからか私が司法試験に合格したことが耳に入ったのでしょう、公安調査局の採用担当者からでした。
「これまでがんばって勉強してきたんだから、弁護士になりなさい。その方がやりたいことができるはずだから」と。それで、弁護士になることを選びました。
——弁護士になってから辞めたいと思ったことはありますか?
それはありません。弁護士の仕事は幅広く、裁判所に通うだけの仕事ではありません。資格を生かしていろいろなことができるので、辞める必要性を感じないです。
——今弁護士として大切にしていることを教えてください。
自分の考えだけに固執しないように気をつけています。「法律的にどうか」と「倫理的にどうか」は別物。考え方は人それぞれなので、自分ではなく、相談者の視点や考え方を尊重しながら業務を行っています。
学校でのいじめ予防授業やキャリア教育講座でも大活躍
——どのような相談を受けることが多いですか?
企業法務と一般民事(債務整理、離婚など)が半分半分くらいですかね。最初は企業法務をメインに受任しようと思っていましたが、尊敬する先輩弁護士に「依頼者が人生をかけてやっていることに人として向き合うという意味では、結局同じなんだよ」と言われ、分け隔てなく相談をお受けしてどのような案件でも真剣に向き合うことにしています。
——中でも印象に残っている相談や裁判を教えてください。
ある刑事事件で30代の男性を担当しました。「その歳でそんな犯罪で人生を棒に振るな。しっかり頭を使って自分の人生を考えていこうよ」と言って諭したところ、きちんとした仕事についてくれました。3年たった今でも連絡をくれています。
—— NPO法人での活動もされていますね。
「ストップいじめ!ナビ」という団体の弁護士チームに所属し、中学校や高校でいじめ予防授業を行っています。先日は、豊島岡女子学園中学校で授業をしました。
—— どんな内容ですか?
まず「法律上の“いじめ”とは、いじめをされた人が心身の苦痛を感じること」という説明から始め、次に「いじめをしないために、当事者以外の人がどのようなことができるか」を考えていきます。
いじめが悪いことであるということは皆が知っています。ただ、どの程度でいじめとなるかが共有できていないと、そもそもどのような行為が悪いかについて皆の意識が異なることになります。そこで、法律上の視点から“いじめ”とは何かを明確にしていきます。
また、いじめの現場では、加害者・被害者よりも傍観者(見て見ぬふりをしている人)が圧倒的に多い。また、実にささいなことで小さないじめが多発しています。
例えば貸した物に傷がついて返ってきたら、皆で借りた人の悪口を言って仲間外れにする前に、借りた人へ事実確認をすべきですよね。こうした具体的なケースをあげて、加害者・被害者だけでなくそれぞれの立場によって、どのような行動をとることができるかを一緒に考えます。
—— 生徒からの反応はいかがですか?
授業後に、生徒さんにアンケートを書いてもらっています。授業の感想だけでなく、質問も受け付けていて、場合によってですが回答を書いて学校に返送することもあります。
中には「嫌なことをされているけど、やめてほしいと言えない」という切実な悩みを書き綴ったアンケートもあり、「どう答えればいいんだろう……」とあれこれ悩みながら、時間をかけて回答を考えています。
——今後はどんなことに取り組んでいきたいですか?
「ストップいじめ!ナビ」の活動を継続するとともに、現在中学校1年生向けに行っているキャリア教育にも力を入れていきたいです。私の話を聞いたのがきっかけで、3年生になったときに「弁護士になりたい」と言う生徒さんもいると聞いて、本当にうれしく思いましたね。
ボルネオ島やアマゾンで昆虫や動物、自然にふれる旅を満喫
——学生時代に打ち込んでいたことは何ですか?
高校時代はサッカーですね。ちょうど日韓W杯のときで、韓国まで観戦に行きました。
——今のご趣味は?
旅行です。これまで訪れて楽しかったのは、マレーシアのボルネオ島や、ブラジルのアマゾンなど。最近はベトナムのホーチミンにも行きました。ボルネオ島は珍しい昆虫の宝庫なんです。
アマゾンでは、ジャングルロッジというジャングルの中の施設に泊まって、アマゾン川をボートで周遊したりピラニア釣りなどのアクティビティを朝昼晩と満喫。プールに野生の猿が来て肩に飛びかかってくるんです。それを追いかけ回して追い払うだけの仕事をしている人がいて、平和だなぁと思いましたね。
ベトナムでは、「スイティエン公園」というテーマパークに驚きました。写真家・佐藤健寿さんの『奇界遺産』という本でも紹介されている場所で不可思議なモニュメントなどを目にしました。規模が壮大なのでオススメです。
——これから行ってみたい国はありますか?
インドにはぜひ行ってみたいです。アフリカもおもしろそうです。
「自分がより良いと思う人生を歩むこと」が最終ゴール
——初回の相談を受けるときに心がけていることはありますか?
相談者の話をしっかり聞いて、話しにくいことも話しやすくなるようにと心がけています。「知りたかった情報がもらえた」とか、「誰かに話すことで安心できた」とか、何か一つ、その方にとって有益なことを持ち帰っていただきたいと思っています。
——最後に、弁護士に相談することにハードルを感じている方へメッセージをお願いします。
どんな案件でも、争うのが解決ではありません。ゴールは「自分がより良いと思う人生を歩むこと」。そのために弁護士がいることを忘れないでください。
足を運んで相談をするというだけで、もう最初の一歩を踏み出しています。自信をもって、一緒に解決策を考えていきましょう。
EKAI法律事務所
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取材・文/樫永 真紀 撮影/樫永 真紀